2008年7月、インドネシアと日本は、新たなステップを踏み出しました。2008年7月1日付で、インドネシアと日本は、経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)を発効しました。
EPAとは、2以上の国(又は地域)の間で、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される包括的な協定をいいます。これまで日本は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイと、EPAを結んでおり、インドネシアが6カ国目となります。
今回のインドネシアとの協定締結、他国より頻繁に取り上げられた印象があるのではないでしょうか。それはインドネシアとのEPAが、日本がEPAを活用して外国人労働者を導入する初の事例だからです。
【インドネシアの「看護師」「介護士」がやってくる】
労働者の職種は「看護師」と「介護士」。人手不足が深刻化している、日本の病院や介護施設での活躍が期待されています。また労働者側にとっては、日本で働くことによる自身の成長、ならびに賃金アップ(インドネシアの10倍前後となる月収20万円程度)も期待でき、双方にとってメリットのある協定となっています。
しかしインドネシアの方が実際看護師・介護士として活躍できるまでの道のりは、決して楽なものではありません。
まず就労までの過程です。日本に入国後、まずは約6ヶ月の日本語研修を受け、医療機関・介護施設に配属されます。働きながら日本の国家資格合格に向けて勉強、看護師は3年、介護士は4年の滞在期間中に、日本の国家資格の取得を目指します。看護師試験は3回まで、介護士試験は1回のみ受験でき、合格した場合は継続して就労できますが、不合格の場合は強制帰国となります。
次に看護・介護技術以外に求めるスキル・能力の多さです。日本語がわかるだけでなく、日本社会、そして日本人の文化・生活・習慣に対する知識と理解が求められています。宗教の違い(インドネシアはイスラム教徒の比率が9割近い)も、受け入れにあたっての懸念材料となっています。
さらに賃金の安い外国人労働者が増えることで、国内の看護・介護職の労働条件低下を心配する声もあります。
こうしたハードルの高さから、当初は500人の応募を見込んでいましたが、今回入国したのは約200人にとどまりました。また日本の受け入れ機関・施設も、34都府県、98ヶ所のみとなっています。
【日本は外国人労働者を受け入れられるか】
EPAによる外国人労働者の受け入れは、まさに日本のダイバーシティ推進に向け、解決せねばならない課題を明確にしています。
まずは日本側が、外国人動労者を「安い労働力」と見なさないことです。収入を得ることによる自分や家族の生活の安定だけでなく、仕事を通じた自己成長・自己実現を目指して働いているのは、外国人も日本人も同じです。「頭数」ではなく、ビジネスパーソンとしてどのように能力を開花させ、活躍していくことができるかを、考えねばらないでしょう。
次に、慣れない異国の地での生活に馴染むための、支援体制が不可欠です。安心して生活できる環境があってはじめて、職場でも力を発揮できます。今回の場合は日本語を身につけると同時に、看護・介護のスキルを学び、試験に合格するための環境整備が求められます。
そして、私たち一人ひとりが、文化や習慣、宗教が異なる人々を尊重し、理解する心構え、これが一番重要ではないでしょうか。外国人というだけで、受け入れることを拒否したり、日本の生活や考え方を押し付けようとしたら、どんなにビジネススキルが高い方であっても、力を発揮するどころか、日本を嫌いになって、帰国してしまうでしょう。
【ダイバーシティは高齢社会を救えるか】
同じ国籍である女性や障がい者のダイバーシティも進んでいない日本。高齢社会に伴う人手不足を解消する手段として、これまでマイノリティとされてきた外国人、女性、障がい者を使おうとするのでは、壁にぶつかってしまいます。
社会全体のダイバーシティが進み、人種、性別、年齢、身体障害の有無などの外的な違いや、価値観、宗教、学歴、生き方、考え方、性格、態度、などの内面の違いを、「個性」として活かし、能力を発揮できるようになれば、単に労働人口が増えるだけでなく、生産性も上がり、より効果的な組織を生み出します。結果として、高齢社会・人口減少社会でも、成長を持続できる国家モデルを、世界に提唱できるのではないでしょうか。
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