「経済と金融は女性が変える」と言ったら、あなたは信じられますか?
『経済に携わる「女性の力」が今後の日本経済を左右する』ことを問題意識とした、その名も「女性が変える経済と金融」研究プロジェクトが、研究結果を報告しました。
座長である小峰隆夫氏(法政大学教授 日本経済研究センター主任研究員)がまとめた概要を、紹介します。
■女性がこれからの経済を変える
なぜこれからの経済を変えるのは女性なのでしょうか。小峰氏は2つの点を指摘しています。
【1:追いつき効果】
日本の女性の経済分野(就業率、女性管理職比率等)への参入度合いは国際的な比較では異常に低くなっています。今後是正に伴い女性の進出は一段と進むことが見込まれます。
【2:構成比効果】
男女の構成比が変わると、行動様式、経済状態が変化します。今後女性の経済力が高まることで、消費・貯蓄全体の姿も変化し、女性色が強まることが見込まれます。具体的には、耐久財や趣味に関する買い物では、男性が「短時間・低価格志向」が強いのに対し、女性はより「こだわり、品質重視型」です。女性の購買力が増すことで、売れ筋商品が変わってくるのです。
■女性の力を活かす=経済を元気にする
なぜ女性の力を活かすと経済が元気になるのでしょうか。小峰氏はマクロとミクロ、2つの観点から説明しています。
【マクロ:実質収入総額は、男性は減少、女性は増加】
1997-2007年の実質収入総額を男女別に見ると、男性は4.4兆円減少、一方女性は6.0兆円増加しています。今後は労働力人口が減るため、女性の力は一段と重要になります。特に高学歴女性の就業機会を拡大し、潜在能力を活かせば、労働者としての頭数が増えるだけではなく、経済全体の生産性も高まります。
【ミクロ:女性を積極的に活用している企業ほど収益性が高く、将来性に優れている】
女性の能力を活かすには、「労働時間よりも成果を重視した評価システム」「専門能力を備えた自立した人材養成」「多様な働き手の能力を活かすダイバーシティ・マネジメントの確立」等、今後の企業が目指すべき方向性が示されています。女性が活躍している企業は、これから目指すべき職場のあり方を先取りして実現しつつあり、先行者利益を得ているのです。
■女性の力を活かす=構造改革の一環
なぜ女性の力を活かすことが、構造改革の一環に位置づけられるのでしょうか。小峰氏は、日本で女性の経済参加度合いが低かったのは、旧来型の働き方が妨げになっていることを指摘しています。
旧来型の日本型雇用慣行(「終身雇用」「年功序列」)を見直し、均衡処遇の確立、企業を超えた労働移動が実現しやすい弾力的労働市場実現、長時間労働是正、子育てと就業が両立しやすい職場環境の整備といった、働き方の構造改革を進めることが、女性の経済進出を促す決め手です。
■広い視野で対応を考える
なぜ広い視野で対応を考える必要があるのでしょうか。小峰氏は「女性から男性への影響」「専業主婦優遇から中立への転換」「子どもの育つ環境整備だけでなく親の働く環境整備も」視野に入れる重要性を指摘しています。
【1:女性問題=男性問題】
「経済的分野で女性の参加が異常に低い」=「非経済的分野(家事・育児)で男性の参加が異常に低い」ことと表裏一体です。女性の働く機会を増やすだけでなく、「家事・育児の男女共同参画」が不可欠です。
【2:女性の経済分野への進出が男性の経済行動を変える】
女性が効率的な時間管理で職場を活性化すれば、男性の時間管理もまた効率化します。女性の進出は職場全体の生産性を上げるのです。
【3:中立的政策支援】
税制面、年金の制度設計、企業手当てなどの面で、専業主婦優遇となっている制度を中立的にしていく必要があります。
【4:多様な選択肢】
育児と就業を支えるには、保育所整備やベビーシッター利用可能性の拡大を進めることに加え、正規雇用のまま短時間勤務を選択できるようにすることなどが必要です。
■好循環を生む女性の経済進出のモメンタム(勢い)
最後に小峰氏は、女性の経済参加が進むことで生まれる好循環が、経済を活性化することを指摘しています。例えば・・・
「女性力の活用→企業のパフォーマンス好転→多くの企業がこれに気付く→女性の進出が促進される」
「女性の消費・投資行動が男性と異なる→女性をターゲットにした商品開発→女性の消費力・金融力はさらに発揮される」
「女性活躍の先駆的な例が積み重なる→後続の女性たちのロールモデルができ上がる→女性の登用が容易になる」
こんな素敵な好循環がめぐるようになったら、女性だけでなく、男性にとっても、生きやすい社会、そして経済活動が活性化された元気な社会が想像できます。
「経済と金融は女性が変える」・・・女性が、経済の行方、企業の行方を左右するだけでなく、男性の行方も左右することになるのですね。
2008年7月8日付「日本経済新聞」
「女性が変える経済と金融」研究プロジェクトが設置された、日本経済研究センターHPはこちらをクリック
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