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2008年 7月05日 ■ 『主婦の友』休刊が示す『女性の変化』

91歳。
・・・人間ではなく、雑誌「主婦の友」の発行年数です。
91年という長期に渡り親しまれてきた「主婦の友」が、2008年6月で休刊となりました。
この休刊は、何を示しているのでしょうか。

■主婦のニーズは「真面目な教科書」から「手軽な生活情報」へ
「主婦の友」の最近の発行部数は、約7万5,000部。かつての最大部数163万8,800部の、わずか4.5%まで落ち込みました。
1993年のリニューアル後、一旦回復した発行部数が減り始めたのは、2003年頃。「面白くて、軽くて、ちょっと試してみたい生活情報」へのニーズが高まり、雑誌だけでなく、TV、インターネット等でも、数多くの情報番組が発信されるようになった時代でした。
一方で「主婦の友」。最終号となる2008年6月の目次を見てみると、「年間あと30万円!貯蓄アップ家計診断」「捨てちゃうもので手作り収納&おもちゃ作り」「テレビを消したらいいことあった!」「●●先生の 家計を守るのはあなたです!」「今さら人に聞けない 家庭科再入門」・・・「本質的に物事を考えて」「堅くまじめな記事を載せる」という、発行人村田耕一氏の言葉通り、「賢い主婦目指して頑張る女性のための教科書」として役に立つ情報が満載。
「真面目な教科書」と「手軽な生活情報」との間の埋めきれない溝が、「主婦の友」を「休刊」に追い込みました。

■「真面目な教科書」を読んでいた主婦とは
では「真面目な教科書」が読まれていたのは、どのような時代だったのでしょうか。
最大部数を記録したのは1943年7月号。戦中の出版統制時代、「銃後を守る女性たち」が、大政翼賛的な内容を、まさに「教科書」として支持していました。戦後、廃刊の危機にさらされたものの、戦後の復興とともに、部数を増やしていきます。戦後最も売れたのは、1969年2月号で、72万8,000部です。
また「主婦の友」は、「主婦と生活」(主婦と生活社)、「婦人倶楽部」(講談社)、「婦人生活」(婦人之友社)とともに「4大婦人誌」とも呼ばれ、最盛期には4誌合わせて600万部という発行部数を記録しました。なお今回の「主婦の友」休刊を持って、4誌は全て書店から姿を消すことになります。
60年代といえば、「給与で生計を立てる中産階級」が増えた時代です。「頭は良くて、貯金が多少できる余裕のある層」の女性が、「自宅で編み物を楽しんだり、お茶を飲んだりという」生活スタイルを実現するための「教科書」が、「主婦の友」でした。「結婚したら『主婦の友』」という、時代を捉えたキャッチフレーズで、30代女性の愛読者を順調に増やしていきました。

■「真面目な教科書」からの卒業
70年代になり、戦後生まれが結婚、「主婦の友」のターゲットになってくると、それまでの女性像が変わってきます。女性の学歴が高くなり、働くことが珍しくなくなります。すると「家庭での生活スタイル」が前提となる「主婦の友」との間にずれが生じてきます。「『主婦意識』がどんどん薄れ」、「生活の中で自分が中心になっていく」、「まず自分が楽しんで、育児も楽しもう」という風に変わっていった、というのが、発行人村田氏の分析です。女性たちにとって、「どこか自己犠牲を払って頑張」ることを求める「真面目な教科書」は、欲しいと思える情報ではなくなってしまったのです。このため「主婦の友」は、元々のターゲットであった30代からは手に取られなくなります。メインの読者層は、60年代に結婚後、継続して読み続ける50〜60代に移行。発行部数は10万部を切りました。
1993年には再び30代をターゲットとすべくリニューアル。95年には60万部まで回復しましたが、バブル崩壊による収入減、貯蓄減による家計の変化等もあり、再び部数は減少。2008年6月号で、91年の歴史に幕を閉じました。

■「生活をもっと楽しむ」雑誌へ
これからの女性のニーズとは、求める雑誌とは、どのようなものなのでしょうか。発行人村田氏の言葉です。「女性がより豊かに、より快適に、楽しい生活を送るための雑誌を作っていかなければなりません。ただそれはもう『主婦の友』のスタイルではありません。いわゆるねじり鉢巻きで頑張りましょうみたいなことではなく、もっと新しいものに変わります。自分も子供と一緒に楽しむとか、そういうものを出したい。生活をもっと楽しむための雑誌とは、どんなものかを模索していきます。」

■女性も、男性も、生活を楽しもう
いつの時代も女性は、そして男性も、「より豊かに、より快適に、楽しい生活を送」りたいと考え、生き方を模索しています。だからこそ、たくさんの雑誌、TV、インターネット等が、生活に関する様々な情報を提供してくれています。どれを選択するかは自分次第ですが、大切なことは、それを「自分で選択できる」こと。自分自身の「ワーク/ライフ・バランス」を実現することが、「生活をもっと楽しむ」ことにつながりますよね。

 

「日経ビジネス」2008年3月24日号

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