あなたの会社は男女同一賃金ですか?
同じ雇用形態、職種であれば、入社時の賃金は同一、その後は仕事の成果により昇給に差がついていくはず。
なのにどうして日本の男女には賃金格差があり、縮小しないのでしょうか?
シカゴ大学教授の山口一男氏の論文を紹介します。
■男女の賃金格差の要因
山口氏は男女の賃金格差の要因を以下の6つに分け、それぞれの原因を説明しています。
1.男女の雇用形態の違い
2.フルタイムで正規雇用者内での男女の賃金格差
3.フルタイムで非正規雇用者内での男女の賃金格差
4.パートタイムで正規雇用内での男女の賃金格差
5.パートタイムで非正規雇用内での男女の賃金格差
6.雇用年齢分布の男女差
このうち1と2が、要因の8割以上を占めています。
■「女性が離職する確立」を下げないからリスクが高まる
6つの要因のうち「2.フルタイムで正規雇用者内での男女の賃金格差」を生み出している制度的原因は、次の2つです。
1)コース制
2)職能評価での女性の差別的取り扱い
原因の根底には、「統計的差別」の問題があります。
「統計的差別」とは、個人の資質が不確定なため、平均の特質を一律に当てはめること。具体的には、女性の結婚・育児での離職率が大きく、企業がそれをコストと見るため、その平均コストを組み込んで女性の賃金を一律に低くするものです。
統計的差別によって制度が作られた結果、「企業が離職を予想して差別→女性が離職を選ぶ(予言の自己成就)→生産性の高い女性の離職傾向を強める」ことや、「コース制での一般職女性の差別的取り扱い→彼女たちの自己投資へのインセンティブ(動機づけ)を低める→生産性を下げる」といった悪循環が生み出されています。
最大の問題は、企業が『女性が離職してしまう場合のコスト』だけを注視し、女性が離職する確立を下げようとしない点にあります。差別により、女性の離職リスクは、むしろ高まってしまっているのです。
■「終身雇用前提」が招く、男女の雇用形態の違い
「1.男女の雇用形態の違い」を生み出している構造的要因は、次の3つです。
1)日本の正規雇用が初職時に偏り、育児離職後の再雇用に正規雇用の機会が少ない
2)日本では短時間正社員制度が普及しておらず、短時間勤務を選ぶことが非正規雇用に結びつく
3)フルタイム・パートタイム雇用者間の時間当たり賃金の均等待遇がない
山口氏は、「3つすべての要因が解決しないと、格差は解消しない」としています。
新卒で入社、定年を迎えるまで、1つの会社で正社員として働く「終身雇用」が前提になっているからこそ、「育児離職後の再雇用」「短時間勤務」「フルタイム・パートタイム」で働く人は、正社員と比較して、女性の割合が高く、賃金は低くなっています。
■女性が活躍する鍵は「ワーク・ライフ・バランス」
上記を踏まえ、企業で女性が有効に活躍できるために、欧州企業が進めている施策が、「ワーク・ライフ・バランス」です。
欧州では「ワーク/ライフ・バランス」は、優秀な女性を確保するだけでなく、「家庭の犠牲を強いる雇用制度では女性を活用できず、多様な働き方の選好を尊重することが、男性を含めた『両立指向型』雇用者活用の鍵」という考えが浸透しています。
よって山口氏は、「ワーク/ライフ・バランス」は福利厚生でなく、「多様なライフプランを持つ人材を広く活用する」観点で推進すべきであると主張しています。「長期雇用や人材投資の見返りを前提とする雇用者の活用しか考えないため、そこから外れる人の自己啓発のインセンティブや就業意欲を奪い、生産性向上を引き出そうとしない人材活用の一面性は不合理」であり、「男性を含む非正規雇用者の活用でも同様」なのです。
■男女も会社も社会も活力UP!
シカゴ大学ケーシー・マリガン氏の研究によると、アメリカでは1970年代から2000年代の30年間の国民総所得の伸びは、100%女性が貢献したという結果が出ました。女性の総所得増加は、主に既婚女性の就業率上昇と、男女の時間当たりの賃金格差の縮小でもたらされたそうです。
「ワーク・ライフ/バランス」は、女性だけにメリットがあるのではなく、会社にも、社会にも、そして男性にも、メリットがあるのですね。
2008年6月16日付「日本経済新聞」
■山口一男氏が所属するシカゴ大学HP(英語です)はこちらをクリック |